月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
バネッサは足を止め、魔法陣の中心に視線を落とす。
古びた石床の紋様がかすかに輝きを帯びはじめ、瘴気がざわめいた。
(なんてことを言うの……)
目の前に立つバネッサは、もはや冷静な思考力さえないようだった。彼女の指先が宙に描いた軌跡を追うように、黒い炎が立ち上る。
冷たい風が吹き抜け、エミリアの髪を揺らした。
「やめて!」
「そう言われて私がやめると思うの? やっとあなたより上になれるというのに。……神殿に仕えるようになってからずっと、あなたが妬ましかったわ。誰よりも愛され、敬われ、慕われ、果てには王太子妃にまで上り詰めるなんて。私のなにがいけないというのよ」
バネッサの声が、次第に熱を帯びていく。その瞳はエミリアを見てはいるが、もはや〝人〟として見ていない。光を失った瞳に映るのは、己の野望の幻影だけだった。
「あなたのような女がいる限り、私は第二の王妃のまま。笑われ、同情され、哀れまれる――そんな屈辱をもう味わいたくないのよ!」
叫ぶように言い放ち、バネッサは両腕を広げた。その瞬間、魔法陣の縁を走る符がひとつずつ光を帯び、床に刻まれた紋様が黒い脈動を始めた。
「やめて! そんな力を使えば、あなた自身が!」
「黙りなさい!」
古びた石床の紋様がかすかに輝きを帯びはじめ、瘴気がざわめいた。
(なんてことを言うの……)
目の前に立つバネッサは、もはや冷静な思考力さえないようだった。彼女の指先が宙に描いた軌跡を追うように、黒い炎が立ち上る。
冷たい風が吹き抜け、エミリアの髪を揺らした。
「やめて!」
「そう言われて私がやめると思うの? やっとあなたより上になれるというのに。……神殿に仕えるようになってからずっと、あなたが妬ましかったわ。誰よりも愛され、敬われ、慕われ、果てには王太子妃にまで上り詰めるなんて。私のなにがいけないというのよ」
バネッサの声が、次第に熱を帯びていく。その瞳はエミリアを見てはいるが、もはや〝人〟として見ていない。光を失った瞳に映るのは、己の野望の幻影だけだった。
「あなたのような女がいる限り、私は第二の王妃のまま。笑われ、同情され、哀れまれる――そんな屈辱をもう味わいたくないのよ!」
叫ぶように言い放ち、バネッサは両腕を広げた。その瞬間、魔法陣の縁を走る符がひとつずつ光を帯び、床に刻まれた紋様が黒い脈動を始めた。
「やめて! そんな力を使えば、あなた自身が!」
「黙りなさい!」