月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「やはり……ここだったのか……」

 彼の声には怒りよりも、深い絶望が滲んでいた。

 「バネッサ、なぜこの場所を……」

 ルーベンの声が震える。その震えは怒りではなく、恐怖と後悔の混じったものだった。

 「まぁ、陛下までいらしたの? ちょうどよかったわ。レオナール、よくお聞きなさい。この場所は、陛下が――」
 「やめろ!!」

 高らかに響き渡ったバネッサの声をルーベンが掻き消す。その声は、血を吐くような痛みを帯びていた。

 「もうこれ以上、口を開くな、バネッサ」

 ルーベンの足がふらつく。だが彼は、それでも階段を下りてくる。
 王としての威厳など、もうどこにもない。肩は震え、手は強く握りしめられ、目の奥に宿るのは後悔と恐怖の色だけだった。
 バネッサが唇を歪める。

 「なぜ? 隠しておきたいの? 〝あの夜の罪〟を。ああ、でも王にとっては不都合よね。 弟を呪った王なんて。ふふ……そんな噂、民に知られたらどうなるかしら」
 「黙れっ!!」

 ルーベンの怒声が地下を揺るがした。
 しかし、もはやそれで押さえ込めるほど、バネッサの狂気は浅くなかった。
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