月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「弟を……呪った?」

 エミリアは声を震わせた。

 (嘘でしょう……? 実の兄が弟に呪いをかけるだなんて……)

 バネッサが微笑みながら、エミリアのほうを向く。

 「そうよ。あなたが見てきたあの呪い、あの忌まわしい現象はすべて、この場所で行われた呪術のせいよ。十年前、王が自らの弟にかけた呪い。王位を脅かす存在を永遠に葬るためにね」
 「やめろ、バネッサッ!!」

 ルーベンは階段を降りきり、荒い息で彼女に詰め寄った。だがその顔は蒼白く、苦悶に歪んでいる。

 「あのときは……あれしか方法がなかったんだ! く、国を守るためだったんだ!」

 自分に言い訳するように掠れた声だった。
 レオナールは黙ってその言葉を聞いている。微動だにせず、ただ静かに。だがその沈黙こそが、誰よりも深い怒りを物語っていた。

 「……国を守るため、だと?」

 低く呟いた声が、石の壁に反響する。

 「兄上、あなたは私を呪い殺すことで国を守ったつもりだったのか」

 ルーベンは顔を上げる。目の奥が揺らめいた。
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