月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「……私の罪が、この国を、そしてお前を狂わせたのなら……!」

 彼は震える手で剣を抜き、刃を胸に突きつけた。

 「陛下! なにをするおつもりですか!!」

 エミリアの叫びが空しく響く。

 「せめて我が命を贄にして、終わらせてやる!」

 その瞬間、レオナールが動いた。

 「兄上、待て――!」

 駆け寄ろうとするも、魔法陣の境界が激しく輝き、空気が裂ける。瘴気と光の奔流が彼の体を押し返す。

 「すまなかった、レオナール……」

 振り返ったルーベンが微笑んだ直後、剣が胸を貫いた。
 血が魔法陣に滴り落ち、赤い光が一気に走る。
 バネッサの悲鳴が響き、その体から黒い霧が吹き出す。それは暴風となって礼拝堂を吹き荒れ、天井を貫き、夜空へと散っていく。

 「いや……いやあああっ!」

 バネッサの体が光に呑まれる。もがく腕が空を掴むように宙を舞い、次の瞬間、光が弾け、彼女の体ごと宙へ消えた。バネッサの残した呪詛の残響が、風の中に溶けていく。
 残されたのは崩れた祭壇と、静かに倒れ伏すルーベンの体だった。
 レオナールは膝をつき、声を張り上げた。
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