月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 夜が更けて宴が終わり、エミリアが部屋に戻って肩の力を抜いたときだった。
 扉が遠慮がちに叩かれた。
 「エミリア……ちょっといいか?」

 扉越しにレオナールの落ち着いた声が響き、エミリアは急いで立ち上がった。
 夜遅く、彼がエミリアの部屋を訪ねたことはこれまで一度もない。なんとなくソワソワしながら扉を開ける。

 「はい」

 灯火に照らされた彼は、夜の静けさを纏って立っていた。
 銀色の髪は揺れる炎に淡く照らされて、絹のような光沢を帯びている。口元にかすかに笑みを浮かべているが、どことなく緊張しているようにも見えた。

 「遅い時間にすまない」
 「いえ。どうかなさいましたか?」
 「少し……話をできないか?」

 遠慮がちに尋ねる瞳が揺れ、それにつられるようにエミリアの鼓動も乱れる。

 「は、はい、もちろんです」

 扉を大きく開け、彼を招き入れた。

 (こんな時間に話ってなにかしら……)

 どこか浮足立った気持ちでソファを勧める。

 「お茶を用意してもらいましょうか?」
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