月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 二週間後の昼下がり、ミカエル領の城門に王都の紋章を掲げた馬車が近づいてきた。

 「誰かしら……」

 上階から窓の外を眺めていたエミリアが呟くと同時に馬車が停まり、悠々とした姿のエリオットが姿を現した。
 少しやつれたように見えるのは、ルーベンとバネッサの一件があったせいだろう。王不在の今、エリオットはその処理に追われていると風の噂で聞く。
 しかし、その瞳には確固たる決意が宿っていた。
 レオナールとエミリアが出迎えると、エリオットは深く一礼した。

 「急ぎ、お伝えせねばならぬことがあって参上しました」

 応接室に移動し席につくと、エリオットはきゅっと口を結び、少し躊躇ってから口を開いた。

 「まずは陛下のことです」
 「その前に、いつものように話してくれ。調子が狂う」

 レオナールは、丁寧な言葉で話すなと言いたいのだろう。エリオットは「それじゃ、遠慮なく」と言って続けた。

 「ルーベン陛下は命こそ取り留めたが、依然として深い昏睡状態にある」

 エミリアの胸がつまるように痛む。
 レオナールの顔に走ったわずかな影は、すぐに静かな表情へと戻った。
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