月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「……そうか。目覚める望みは?」
 「治療師たちによれば、時間がかかる可能性が高いということだ。目醒めないまま、永く臥した状態になるかもしれないと。……まぁそれ以前に、レオナールに呪いをかけた罪で王に返り咲くのは当然ながら無理だろうがね」

 重苦しい沈黙が落ちる。
 エミリアの胸には冷たい痛みが走った。
 ルーベンの罪は重い。しかし彼が最後に見せた兄としての姿は、エミリアの中にたしかに残っていた。
 あの瞬間、彼は弟を守ろうとした。呪いを断ち切るために、自らを犠牲にした。
 それが赦しのすべてではないとわかっていても、彼の行動が無意味だったとは思いたくない。昏睡という言葉は、まるでその思いを否定するように響いた。
 レオナールの表情に一瞬走った影を見て、エミリアは彼の心にも同じ痛みがあることを感じた。
 それでも彼は、静かに受け止めていた。
 エミリアもまた、胸の痛みをそっと抱えながら、ルーベンの選んだ最後の道がほんの少しでも報われることを願わずにはいられない。
 エリオットは姿勢を正し、次の言葉を絞り出した。

 「ルーベン陛下のご不在により、国は宙ぶらりん。王族、貴族院、神殿の代表たちによる協議が行われ――」

 そこでいったん言葉を止め、エリオットはレオナールを真っすぐに見つめた。

 「レオナール殿下。王位は、あなたが継ぐべきだという結論に至った」

 エミリアの思考は一瞬止まった。
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