月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 (……レオナール様が、モルテン王国の王に?)

 第二王子として生を受けた彼なら、そのような話が出てもおかしくない話ではある。
 しかしエミリアは、その可能性が頭からすっかり抜けていた。この地での生活に慣れきっていたせいか。レオナールは、前国王アルフォンスの血を受け継いでいるのだ。
 突然の話に驚くエミリアに反して、レオナールは動揺の色を見せない。ただ、静かに事実を受け止めているように見えた。

 「……兄、ルーベンの代わりに、私が王位を預かるというわけか」
 「預かるというより、正式な継承となる見込だ。国を導く者が不在のままでは混乱が広がるばかりだからね」

 エリオットはそこで表情を曇らせた。

 「ただし、その前に大きな課題がある」
 「結界のことね?」

 ピンときたエミリアが先に口を開くと、エリオットは真剣な面持ちでうなずいた。

 「陛下が神殿との関係を断ってからというもの、各地の結界が弱まっていることは殿下もすでにご承知のこと。王都を守る大結界も、いつ崩れてもおかしくない状態だ」

 レオナールは眉根を寄せた。

 「もし崩れれば、王都は闇に呑まれる」
 「だからこそ――」
< 207 / 224 >

この作品をシェア

pagetop