月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 それは王家の血に宿る加護の力であり、王となる者の持つ、国を束ねる光でもある。
 ひび割れた石に金の光が触れると内部の黒い瘴気がざわりと動き、押し込められるように沈んでいった。
 エミリアも手を重ねる。白い光が静かに溢れ、石へ流れ込んでいく。

 「レオナール様、手を貸してください」

 エミリアが差し出すと、彼は迷いなくその手を取った。指が触れ合った瞬間、ふたりの光がひとつに混じり、温かい風が吹き抜けていく。
 結界石が震える。
 ひびの奥に閉じ込められた闇が、じりじりと後退していくのがわかった。
 金と白。
 ふたりの光が重なる場所が、ゆっくりと輝きを取り戻していく。

 「もう少しだ……。エミリア、ゆっくり呼吸して」
 「はい……」

 ふたりの光が絡まり合うように大きく広がり……やがて結界石全体を包み込んだ。
 ぱあっと、光が弾ける。
 大聖堂の天井へ向かって一気に上昇した光は、そのまま王都全域へと流れ込み、透明な膜が空を満たすのが見えた。

 「……結界が……戻っていく……」

 エミリアは固唾を呑んでその光景を見つめていた。
 王都を包む巨大な光の壁が、かつて失われた輝きを取り戻し、穏やかな脈動をはじめる。
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