月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 レオナールは深く息を吐き、エミリアの手をぎゅっと握ったまま言った。

 「ありがとう、エミリア。キミがいなければ、この結界はもう立ち上がらなかっただろう」
 「いえ、私だけの力じゃありません。レオナール様が隣にいてくれたから、できたことです」

 素直な言葉が自然に零れる。
 レオナールは目を細め、光の残る空を見上げた。
 結界の光が空へと広がっていくのを見届けながら、エミリアの胸には静かな熱が満ちていた。ようやくこの国に光が戻った。その実感が、指先から熱く広がっていく。
 しかし、それ以上に胸を打ったのはレオナールの言葉だった。

 「この国を守っていこうと思う」

 そのひと言に込められた覚悟と優しさが、エミリアの心を深く揺らす。
 彼はもう、呪いに囚われた王子ではない。自らの意思で未来を選び、国を導こうとしている。

 「エミリア、それでも私のそばにいてくれるか?」

 その未来に、自分の居場所を問いかけてくれた。

 「はい、もちろんです。私の生きる場所はレオナール様の隣以外にありませんから」

 エミリアは、迷うことなく答えた。
 レオナールの隣にいること。それは義務でも命令でもない。自分自身の願いだった。
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