月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません

 一カ月後――。
 王宮ではレオナールが正式に王位を継ぐ儀式が執り行われようとしていた。
 普段とはまるで表情を変えた大広間には王座まで深紅の絨毯が真っすぐに敷かれ、天井からは無数の灯火が垂れ下がっている。その光は揺れることなく輝き、新たな王を祝福するかのようである。
 エミリアを含めた王族の席、神官、貴族院、騎士団、そして城下から選ばれた民の代表たちすべての視線が、大扉が開かれるときを今か今かと待ちながら見つめている。
 そうしていよいよ、扉が静かに音を立てた。
 足音がひとつ、響く。
 ゆっくりと歩みを進めるのは、レオナールである。呪いに縛られていた彼の姿はもうない。
 黒を基調とした式服に王家の紋章が織り込まれ、肩には薄く銀糸が光る。陽光に似た金のマントが揺れ、ひるがえるたびに光を散らした。
 民衆側の列に立つ者たちが、息を呑んだ。

 「あれが、新しい王……」
 「なんと……!」

 感嘆交じりの声は、憧れを含んだ納得だった。レオナールは、〝この者こそ、我らの王に相応しい〟と自然に思わせる気配を纏っている。
 その彼が玉座の前まで進み、跪いた。
 儀式を取り仕切るのは神官長である。王家と神殿が再び協力関係を結ぶという、新たな意味を持ってここに立っている。

 「この王冠は、モルテン王国の守護を継ぐ者にのみ戴くもの。国を治める力と、民を導く覚悟を持つ者へ――」
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