月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 神官長が王冠を持ち上げる。
 三つの宝石――紅、蒼、白――が鈍く光る。それは歴代の王を象徴する色であり、剣と智慧、そして民の平和を意味している。
 その王冠が、レオナールの頭上へと降ろされる瞬間、エミリアの心臓はひと際大きく高鳴った。

 (……この人はもう、呪われた王子じゃない)

 冠が彼の銀髪に触れたとき、空気が変わった。広間のすべての人間が、自然と膝をつく。
 静寂ののち――

 「王に、万歳を!」

 騎士団長のエリオットが声を上げた。

 「万歳! 万歳!」

 それは波紋のように広がり、やがて大広間全体を揺るがすほどの歓声となった。
 レオナールはゆっくりと立ち上がる。視線は集まった人々に真っすぐに向けられ、噛みしめるように言葉を紡いだ。

 「私はレオナール・アルタミラ。いずれの日も、この国と民を守るために歩むと誓おう。 光が弱まるときは光を掲げ、闇が迫るときは剣となる。そのすべてを私の名にかけて」

 王としての覚悟と、かつて闇に囚われた男の強さ、その両方を併せ持った高らかな宣言を誰もが息を呑んで聞く。
 観衆のなかで、ひとり静かに涙ぐむ者がいた。セルジュである。
 彼の肩越しにカーリンが小声でささやく。
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