月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 そう呟いたエミリアの髪に、レオナールはそっと唇を寄せた。
 そして、小さく息を吐くように言葉を落とす。

 「まだ、だ」
 「え……?」
 「キミを幸せにするのは、これからだ。今日の幸福がはじまりになるように、私は一生をかけて、キミを幸せにし続ける」

 静かな囁きは、王の宣誓にも負けないほど力強かった。

 「民のために剣を掲げる。国のために智慧を尽くす。だが、キミのためなら私のすべてを差し出せる」

 エミリアの肩に添えられた指に、少しだけ力を込められる。

 「王として過ごす日々が、どれほど厳しくとも構わない。キミがそばにいてくれるなら、私は何度でも立ち上がれる」
 「レオナール様……」

 嬉しい言葉の数々に声が詰まる。
 見上げると、彼の瞳が真っすぐに自分だけを見つめていた。
 その視線に触れた瞬間、胸の奥が熱く震える。

 「エミリア」

 名を呼ぶ声は、優しさと熱を孕んでいた。次の瞬間、レオナールの手がそっと彼女の頬を包む。まるで宝物に触れるような動作だった。
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