月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「ここは本当に、世界の果てのようですよね」
 「ええ。でも、静かで美しい場所だわ」

 カーリンの言葉にエミリアはそう言って、そっと窓辺に立った。
 遠い王都の鐘の音も届かない場所。しかし、その静寂の中にこそ、これからはじまるなにかがあるような気がしていた。
 部屋の奥で暖炉の火がぱちぱちと音を立てる中、カーリンは机の上に折り畳まれた衣をそっと広げた。

 「こちら、お着替えのお召し物です。祖父が用意いたしました。少し地味かもしれませんけれど」
 「いいえ、とても素敵です」

 淡い灰青のドレスに、白い襟。王都で着ていた絹の衣とは違い、質素だが温かみがある。
 鏡の前で着替えを終えると、カーリンは手際よくエミリアの髪をまとめ、薄いショールを肩にかけてくれた。

 「……お綺麗です」

 ぽつりと漏れたカーリンの言葉に、エミリアは苦笑する。

 「ありがとう。カーリンがお手伝いしてくれたからね」

 カーリンは少し照れたように俯いた。
 その後、彼女に案内されて食堂へ向かう。
 長い廊下は薄暗く、壁に並ぶ燭台が揺れる影を投げていた。時折外から風の音が聞こえ、窓の外では雪が静かに舞っている。
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