月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
食堂は広く、天井の梁が高い。長いテーブルの上には白布が掛けられ、銀の燭台が三つ、等間隔に置かれている。
だが、席についたのはエミリアひとりだった。
温かいスープの香りが漂う。夕食は質素ながら丁寧に整えられ、スープ、黒パン、鶏肉の煮込みが並んでいる。
だが、もうひとつの席、テーブルの上座には誰もいない。
「……レオナール殿下は?」
しばらくして現れたセルジュにエミリアは遠慮がちに尋ねた。
老執事は一瞬、言葉を選ぶように沈黙し、それから静かに答えた。
「殿下は……外へ出ておられます」
「外に?」
あの体で、こんな雪の中をいったいどこへ行ったというのか。
エミリアは目を丸くする。
「ええ。近頃、夜の間は決まっておひとりで……。どうか、お気になさらずに」
それ以上の言葉はなかった。
執事は深く一礼して退き、食堂には再び沈黙が満ちる。
窓の外では、吹雪の音がかすかに響いていた。
(外へ……。まさか噂に聞く〝異形〟の姿で?)
エミリアはスプーンを持つ手を止めた。