月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
それからも、レオナールが夕食の席に姿を現さない夜は続いた。
昼は自室で休んでいることが多いらしく、会えるとしても朝食のわずかな時間だけ。夜の間にどこでなにをしているのか聞くのも躊躇われ、セルジュやカーリンに尋ねてもどこか申し訳なさそうに曖昧な笑みを浮かべるばかり。
そうして二週間ほどが過ぎた朝のことだった。
食堂に入ると、レオナールはすでに上座に座っていた。
その姿を目にして、エミリアは思わず足を止める。老人の姿は変わらないが、初めて会った日よりもさらに老いが濃くなったように見えた。
直す間もなかったのか銀白の髪は乱れ、頬は痩せて指先の血の気が薄い。
しかし、その目だけは冬の朝の氷を透かす光のように、相変わらず澄んでいる。
「……おはようございます、殿下」
エミリアが静かに挨拶すると、レオナールはわずかに顔を上げてうなずいた。
「おはよう。……すまぬな、今朝は少し手間取っていた」
低い声が、かすかに掠れている。
近くの席につこうとしたとき、エミリアの目がある一点で止まった。
彼の右手に包帯が巻かれていた。布の端から赤茶けた染みがうっすらと覗いている。
「殿下、お怪我を?」
思わず立ち上がり、席のそばまで歩み寄る。