月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 王都にいた頃、神殿で学んでいたときも王太子妃となってからも、気安く出かけられなかったため、出かけるという行為自体がないに等しかった。
 それと同時に、こんな北の外れに街があるというのも驚きだ。
 神殿では国の成り立ちやさまざまな地域について学んだが、ミカエル領についての記述はほとんどなかった。国にとってこの地は、呪われた王子を封じ込めた、忌むべき場所という認識なのかもしれない。

 「セルジュ、カーリン、エミリアを街へ連れていってやってくれ」
 「承知いたしました」
 「はい!」

 セルジュが恭しく胸に手をあてれば、カーリンは元気よく手を上げる。
 ふたりが一緒に行ってくれるのはありがたいが――。

 (殿下は行かれないのかしら……)

 毎夜、魔獣の討伐に出て疲労しているのはわかっている。老いた体で馬車に乗るのが大変なのも承知している。
 しかし――。

 「殿下も一緒に行きませんか?」

 街へ行くなら、レオナールも一緒がいいと思ったのだ。
 レオナールが目尻に深く刻んだ目を見開く。そんな誘いを受けるとは思ってもいない表情だ。

 「私が介助いたします。馬車に乗っている間、殿下の疲れが取れるよう治癒の祈りも捧げますから」
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