月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 セルジュとカーリンが目を輝かせる。

 「殿下、エミリア様とお出かけになってはいかがですか? 幸い雪もやんでおりますし」
 「ぜひエミリア様に手袋を選んで差し上げてください!」

 ふたりからの後押しに、レオナールが考え込む。

 「いや、しかし迷惑をかけるわけにはいかぬ」
 「迷惑だなんて。私は殿下と街へ行きたいです」

 レオナールの目に驚きと、わずかに喜びの色が滲んだように見えた。
 三人の言葉に、レオナールがようやくうなずく。

 「……では、そうしよう」

 お茶を飲み干し、立ち上がろうとした彼をエミリアが支える。

 「世話をかけるな」
 「いえ、私になんなりとお任せくださいませ」

 この一カ月の間、接してきたレオナールの静けさにエミリア自身、心が凪いでいくのを感じていた。彼のそばにいると、不思議と気持ちが安らぐのだ。元夫である国王に追放された悲しみを癒すには十分なほど。
 それはエミリアが、生まれて初めて覚える感覚だった。
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