月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
レオナールは微かに笑んだ。
その表情に、かつて若き王子であった頃の面影がほんの一瞬だけよぎる。
彼の視線がふと、エミリアの手の甲に留まった。
淡く輝く紋章――治癒の印。その光が祈りとともに揺らめいている。
「その印……王家の神殿でも限られた者しか持たぬはずだ。聖女の証だな」
レオナールの声は穏やかだったが、どこか哀れみを帯びていた。
エミリアはわずかに眉を伏せ、唇を噛む。
「……はい。でも、私にはこの紋章に見合うほどの力はありません。生まれつき魔力が弱くて、国の儀式でも一度も……国王陛下に認められたことはありませんでした」
その声は、今にも雪解けの滴のように消え入りそうになった。長く胸の奥に押し込めてきた悔しさと寂しさが、馬車の静寂の中でふと滲み出る。
レオナールはしばらくなにも言わなかった。
ただ、手は離さずにいた。
老いた手のひらから伝わる体温はとても優しく、揺るぎないものに感じられる。
「……力というものは、量では測れぬ」
「え……?」
「誰かの痛みを見て手を伸ばせる者。それこそが、真に癒す力を持つ者だ」
レオナールはゆっくりと目を細めた。
「それを持たぬ聖女など、この世にひとりとしていない」
その表情に、かつて若き王子であった頃の面影がほんの一瞬だけよぎる。
彼の視線がふと、エミリアの手の甲に留まった。
淡く輝く紋章――治癒の印。その光が祈りとともに揺らめいている。
「その印……王家の神殿でも限られた者しか持たぬはずだ。聖女の証だな」
レオナールの声は穏やかだったが、どこか哀れみを帯びていた。
エミリアはわずかに眉を伏せ、唇を噛む。
「……はい。でも、私にはこの紋章に見合うほどの力はありません。生まれつき魔力が弱くて、国の儀式でも一度も……国王陛下に認められたことはありませんでした」
その声は、今にも雪解けの滴のように消え入りそうになった。長く胸の奥に押し込めてきた悔しさと寂しさが、馬車の静寂の中でふと滲み出る。
レオナールはしばらくなにも言わなかった。
ただ、手は離さずにいた。
老いた手のひらから伝わる体温はとても優しく、揺るぎないものに感じられる。
「……力というものは、量では測れぬ」
「え……?」
「誰かの痛みを見て手を伸ばせる者。それこそが、真に癒す力を持つ者だ」
レオナールはゆっくりと目を細めた。
「それを持たぬ聖女など、この世にひとりとしていない」