月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「そうでしたのね」
 「もしかして、カーリンは知っていたの?」
 「はい。ただ、殿下が望まれなかったので、お伝えできずにおりました。殿下は……かつてこの地を覆った魔の災いを封じる戦で、深い呪いを受けられたそうです」

 カーリンはいったん深く息を吸って続ける。

 「命を保つ代わりに、昼のあいだは力を奪われ、老いた姿に変えられてしまう。その呪いが解けるのは夜の間だけ。でもそれも、一時的なものにすぎません。本当の意味で癒えることはないのかもしれません」

 エミリアは、胸がきゅっと締めつけられるのを感じた。
 昼の彼の静かな微笑、そして夜の彼の苦痛に満ちた横顔。どちらも彼自身なのだと思うと、涙が滲む。

 「……そんなにも重いものを、たったひとりで背負っていたのね」
 「殿下は、エミリア様にはそのことを知られたくなかったのだと思います。ご自分の苦しみより、エミリア様の安らぎを選ばれる方ですから」

 カーリンの言葉に、エミリアは顔を上げる。
 暖炉の炎がわずかに揺れ、ふたりの影を壁に映し出していた。

 「もし私がレオナール様を助けられるとしたら、どうすればいいのかしら」

 その問いに、カーリンは頬を綻ばせた。
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