月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「たぶん、エミリア様がお側にいることがすでに救いになっていると思います。エミリア様がここへいらしてから、殿下は以前よりずっと人間らしくなりましたから」

 その言葉がやけに胸に染みる。エミリアは小さくうなずき、深く息を吸い込んだ。

 「ありがとう、カーリン。……私、もっと強くなりたい」
 「きっとなれますわ、エミリア様」

 カーリンは微笑み、そっとエミリアの手を握る。
 遠く、東の空がかすかに白みはじめていた。
 夜明けが近い。しかしエミリアの胸の中には、まだ消えぬ月光のような想いが静かに残っていた。
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