月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「……聖獣?」
 「ミミナと呼ばれる聖獣です」

 エミリアはすぐに膝をつき、手をかざした。
 毛の間から滲む血。脚には裂傷があり、呼吸も浅い。

 「かわいそうに……きっと、魔獣に襲われたのね」

 手のひらに祈りを込める。やわらかな光が滲み出し、傷口を包んだ。
 光が静かに消える頃、ミミナはかすかに身じろぎし、やがて目を開けた。

 「大丈夫よ。もう痛くないわ」

 エミリアが優しく語りかけると、聖獣は小さく鳴き、彼女の手のひらを鼻先で押した。
 カーリンがその様子を見て感嘆の声を漏らす。

 「まあ……また聖獣が、エミリア様に懐いております!」
 「傷が癒えるまで、この庭で休ませてあげましょう」

 そう言ってエミリアは自室から古い毛布を持ち出し、小さな寝床を作った。
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