月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
(――いや、なにを感傷に耽っている。エミリアを追放し、私は救われたはずだ。レオナールとともに沈黙の谷に沈めたのだ。もう恐れるものはなにもない。そうだ、私は間違っていない……!)
不意にバネッサがルーベンを背後から抱きしめる。
「陛下、私がいるではないですか。それで十分でしょう?」
バネッサの声は絹のようにやわらかいのに、どこか冷たい。彼女の腕が、ゆっくりとルーベンの胸を締めつける。
「十分、か」
ルーベンはわずかに笑った。その笑みには、疲労と嘲りが入り混じっていた。
「お前の言う『十分』は、なにを指している。国か、私か」
バネッサは小さく息を吐いた。
「どちらでも構いません。あなたが王である限り、私はあなたに仕えます。けれど私は信じています。あなたが神に選ばれたのではなく、自らの手で王となった人間だからこそ、この国は生き延びるのだと」
その言葉に、ルーベンは目を細めた。
〝神に選ばれた〟
その響きが、耳に刺さる。エミリアを、レオナールを、思い出す。
不意にバネッサがルーベンを背後から抱きしめる。
「陛下、私がいるではないですか。それで十分でしょう?」
バネッサの声は絹のようにやわらかいのに、どこか冷たい。彼女の腕が、ゆっくりとルーベンの胸を締めつける。
「十分、か」
ルーベンはわずかに笑った。その笑みには、疲労と嘲りが入り混じっていた。
「お前の言う『十分』は、なにを指している。国か、私か」
バネッサは小さく息を吐いた。
「どちらでも構いません。あなたが王である限り、私はあなたに仕えます。けれど私は信じています。あなたが神に選ばれたのではなく、自らの手で王となった人間だからこそ、この国は生き延びるのだと」
その言葉に、ルーベンは目を細めた。
〝神に選ばれた〟
その響きが、耳に刺さる。エミリアを、レオナールを、思い出す。