月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「はい。なので、魔物になった姿で魔獣と戦っているのかと思っていました」

 エミリアがはにかみながら笑う。

 「では、期待を大きく裏切ってしまったわけだな」
 「裏切っただなんて……。本当のレオナール様に出会えましたから。でも、どちらのレオナール様も、私にとっては同じくらい大切です」

 その言葉に、レオナールは息を呑んだ。

 「……っ、私はなにを言っているのでしょう」

 エミリアは慌てたように目を逸らし、頬を赤く染めた。
 暖炉で火の粉がぱちりと弾け、ふたりの影が壁に寄り添うように揺れる。
 この穏やかな夜が、長く続けばいい。
 そう願いながら、レオナールは黙って彼女の笑顔を見つめていた。
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