月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「へ、陛下より、王都にて春の祝宴を催すゆえ、殿下とエミリア殿のご臨席を賜りたくとのことです」

 その場の空気が一瞬止まった。
 エミリアは驚きに目を瞬かせ、レオナールは沈黙のまま封蝋に指をかけた。
 蝋が砕ける音が、やけに大きく響く。中には、流麗な文字でこう記されていた。

 【王都の安寧と新たな時代の祝福を共に分かち合いたい。すべての過去を赦し、新しき絆を示すために。国王ルーベン・アルタミラ、および王妃バネッサ・セラディス】

 「赦し?」

 レオナールが訝しむように呟く。
 そばで文面を見たエミリアにも、それはまるで施しのように思えた。

 「過去を赦す、か……」

 静かな声が広間に落ちた。
 使者は顔を伏せたまま動かない。
 エミリアが恐る恐る口を開く。

 「陛下が……私たちを、招いておられるのですか?」

 いったいなぜという疑念が胸の中を渦巻く。追放したのはそちらではないのか。
 祝いの宴とはいったいどういうことなのか。

 「ああ。だが、祝いのためかどうかはわからぬ」

 レオナールは窓辺に歩み寄り、遠く霞む空を見つめた。
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