月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 (もしかしてレオナール様?)

 昼間の頼りないものとは違い、力が漲っているような足音だ。セルジュとも違う。
 ノックに応答すると、ドアが開いた。入ってきたのは予想通りレオナールだった。
 深い群青の上衣に薄手の外衣を羽織り、上質な絹のようにしなやかな生地が灯りを受けてほのかに光る。胸元は緩く開かれ、そこから覗く喉元に細い銀の鎖がひとすじ落ちていた。
 銀糸を思わせる髪が流れ、蝋燭の灯を受けてやわらかく光る。深い蒼の瞳は夜気を映して澄み、整った顔立ちはまるで月の王のよう。
 その美しさに、エミリアは思わず息を呑む。昼間の彼も気高く知的で素敵だが、ときめきを覚えずにはいられない。

 「こんな時間に、どうなさったのですか?」

 エミリアが問いかけると、レオナールは軽く笑みを浮かべた。

 「部屋の前を通りかかったら、話し声が聞こえたものだから」

 真っすぐに注がれる視線が眩しい。
 邪魔はできないと思ったか、カーリンがこそこそと部屋を出ていく。

 「今夜は魔獣討伐へは行かれないのですね」
 「いや、ついさっき帰ってきたところだ」
 「そうだったのですね。気づかずすみません」

 見たところ怪我は負っていないようでほっとする。
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