月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「気にするな。それで遅くまでどうしたのだ」
 「王都に着ていく服のことで悩んでいたのです」
 「なるほど。だからこうして……」

 レオナールは視線をベッドに向け、並べられた三着のドレスを見た。
 衣装をひとつひとつ手に取り、指先で布の質をたしかめる。その仕草があまりにも優雅で、エミリアはつい見惚れてしまう。

 「どれもキミに似合うが」

 レオナールはふと、淡い桃色のドレスを手に取った。

 「これは……王都にいた頃のものか?」
 「はい。かつて陛下の御前に出たときに着たものです」
 「そうか」

 短い沈黙が落ちる。レオナールの瞳に一瞬、影がよぎったように見えた。

 (陛下のことなんて口にするべきじゃなかったのかもしれないわ)

 形ばかりとはいえ、現在のエミリアはレオナールの妻である。謝ろうと口を開きかけたそのとき。

 「新しいドレスを仕立てよう」
 「え……?」
 「祝いの宴に出るなら、今のキミを映すものがいい。過去ではなく、今この地で生きるエミリアとして」

 そう言ってレオナールは微笑んだ。
< 85 / 224 >

この作品をシェア

pagetop