月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 (どんな宮殿の光よりも美しいだなんて……)

 その言葉は、ただの褒め言葉ではないと知っている。
 彼が見ているのは外見の華やかさでは、きっとない。この城でともに過ごした時間も含めて美しいと言ってくれているのだろう。
 老婦人は最後に裾の長さを測り、すべてを終えた。

 「七日ほどで仕上がると思いますので」
 「ありがとう」

 レオナールが穏やかに告げると、老婦人は深く礼をして部屋をあとにした。
 残されたのはエミリアとレオナールのふたり。セルジュとカーリンも静かに退室し、部屋に優しい沈黙が落ちる。

 「レオナール様、先ほどのお言葉、うれしかったです」

 素直な気持ちを伝えたくてエミリアが椅子の前に跪くと、レオナールは目を細めた。

 「うれしいのは私のほうだ」

 意味がわからず首を傾げる。

 「この地でキミが笑っている。それだけで冬を越えた意味がある」

 しわがれた声の中にかすかな震えがあった。
 それは疲れでも老いでもなく、誰かの幸せを願う、優しさの震えに思えた。
 エミリアはそれを受け止め、そっと微笑む。
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