あなたとは合わないと思っていたけれど
 言い出した友人は、先ほどまでよりも早口で弁解をはじめる。

「ただ武琉君がずっと結婚しないから、私たちでお相手を探してあげようって話をしたことがあってね。その相手が早織ちゃんって言う武琉君の幼馴染の子だったのよ」
「……そうなんですね」

 早織の名前が出てきたときから、香澄は息苦しさを感じていた。

 彼女本人も武琉と結婚する予定だったと言っていたし、武琉もそのような話が親の間で有ったということは認めていた。

 けれど義母の友人たちまでもが知っているほど、早織が武琉の相手として見られていたなんて。彼女たちは香澄と早織を比較して評価しようとしている。

「香澄さん、武琉がなかなかお結婚しないからお見合い相手を探していただけなのよ。武琉と香澄さんとの交際を知らなかったときの話だから、気を悪くしないでね」

 義母のとりなしの言葉に、香澄は気にしていませんと微笑もうとした。でも顔が強張ってしまって上手くいかない。

 その後、きまずさを消そうと、誰かが話題を変えて穏やかな会話が続いた。

 香澄は十分付き合ってから、そろそろ大丈夫そうだとタイミングを見計らい席を立ち、ひと息入れがてら化粧室に向かった。

 用を足してから室内に戻るまで、少しホテルの中庭の方を見てみようと思った。もし武流が居たら合流してもいい。どちらにしても、少し気を抜きたかった。
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