あなたとは合わないと思っていたけれど
八章 隠した想い
 五月最終週の土曜日。香澄は自宅で梅酒造りを楽しんでいた。

 数年前に流行ったときにチャレンジをして、それ以降毎年仕込んでいる。手作りの梅酒は自分好みにできるし、満足度もあるのだ。

 大量の青梅の下処理をしたら、保存瓶に青梅と氷砂糖を入れる。香澄は甘さ控えめが好みだから砂糖はレシピよりも少な目に。その上からホワイトリカーを注いでいく。しっかりと蓋を閉めたら完成。大き目の瓶をふたつと、小さな瓶をふたつ作った。

(出来上がるのが楽しみだな~)

 昨年は菜恵に少しお裾分けをしたら喜んでくれたから、今年は一瓶プレゼントするつもりだ。

(武琉さんも飲むかな)

 彼は滅多に飲酒はしないが、飲めない訳じゃない。休日の前にひとくらいならきっと香澄につきあってくれるかもしれない。

(梅酒に合いそうなレシピを増やしておこう)

 うきうきしながら保存瓶を戸棚に仕舞っていると、インターホンが鳴った。モニターを確認するとエントランスではなく玄関前のインターホンが鳴らされたようだ。

 応答ボタンを押して「はい」と呼びかけるのと同時に、モニターが玄関前の様子を映し出す。

 ドアの前には背が高くすらりとした男性が佇んでいる。見覚えのあるその姿に、香澄は軽く目を開いた。
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