あなたとは合わないと思っていたけれど
(北山君?)
画面に映るのは、先日義父のパーティーで会った北山英二に見える。
あのときのようなスーツではなく、Tシャツにパンツのラフな服装だけれど間違いない。
(でもどうしてここに?)
香澄の疑問に答えるようなタイミングで、彼が口を開いた。
「隣に越してきた者ですが、ご挨拶に伺いました」
感じのよい声は、やはり英二のものだ。
「今、出ます」
香澄は名乗ろうかと思ったが、出た方が速いとモニターを切り玄関に向かった。
(まさか北山君が隣に越してくるなんて)
ここに引っ越しをしてきたときにご近所への挨拶するべきか迷い武琉に相談し、彼と一緒に同フロアの近い部屋にだけ伺うことになった。
そのときに隣室は引っ越していったばかりだと知っていたのだけれど、旧友がご近所になるとは予想していなかった。
英二はぶつからないように気遣ったのか少し距離を置いて位置で待っていた。玄関ドアが開くとこちらに笑顔を向けたが、香澄だと認識すると目を丸くした。
「えっ、香澄?」
香澄は頷いて説明を始めた。
「うん、私ここに住んでるの。北山君が隣に越してくるなんて驚いたよ」
「俺も……こんな偶然あるんだな。あ、これつまらないものだけど」
英二は引っ越し挨拶の品を律儀に差し出した。
「ありがとう」
「今日、旦那さんは?」
英二はドアの向こう、室内の様子をちらりと窺うように言った。