あなたとは合わないと思っていたけれど
 彼はいつもエネルギーに溢れていて、傍から見て疲れているなと感じたことはない。

 こんなふうに香澄が異変を感じるのは珍しいことだ。

「武琉さん、体調がよくないの? よかったらおかゆでも作ろうか?」

 心配になってそう聞いてみると、彼は驚きの表情になった。

「ありがとう。でも大丈夫だ」

 武琉は柔らかい口調ながらもはっきりと断った。

「少し疲れてるみたいだ。部屋で休むよ」

 彼は踵を返して自室に足を向かった。一度も振り返ることなく扉が閉まる。

 香澄の胸がちくりと痛んだ。

 考えてみたら武琉を誘って断られるのは初めてだ。

 改めて気づいた。契約結婚だからお互い干渉しないようにしよう。そう取り決めて線引きしていたが、彼は決して香澄を遠ざけなかったのだ。

 だからか、香澄は武琉に拒否されないと、いつの間にか思いあがっていたのかもしれない。

(断られたくらいで落ち込むなんて)

 武琉への気持ちを自覚したせいで、敏感になっているのかもしれない。

 こんなことで傷つくのは自分勝手だ。そう分かっていながらも気持ちが沈むのを止められなかった。
 
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