あなたとは合わないと思っていたけれど
 とっておきのワインをグラスに注いで、巨大クッションに座って映画を見ていても幸せを感じられない。

 今までどうして満足感を覚えていられたのか、分からなくなりそうだ。

「はあ……」

 香澄は大きなため息を吐き、ワインを呷った。

 酔っ払ってこのモヤモヤした気持ちをなんとかしたい。これまでも嫌なことが有ったときはそうやって乗り切ってきた。でも今は少しもすっきりしない。巨大スクリーンに映る映画を見ていても頭に入ってこない。

 そのとき玄関のドアが開いた。

(武琉さん?)

 香澄は一瞬で酔いが醒めたような気分になった。

 ぐったりと寄りかかっていた巨大クッションから体を起こす。

 武琉がリビングに入ってきた。彼は香澄に目を向けると僅かに目を見開いた。

「ただいま……大丈夫か?」
「お帰りなさい」

 香澄はすぐに体を起こした。冷水を被ったように一気に気分は醒めたが、体はふらふらしてしまっている。武琉が心配そうに近づいてきて屈みこんだ。

「顔色が悪いな。具合が悪いのか?」
「大丈夫。明日休みだからちょっと飲み過ぎただけ」

 そう答えると武琉がほっとしたように頷いた。

 香澄の体調を案じてくれているのか、今日の武琉は以前のように優しい気がする。

 だからか香澄はつい素直な気持ちを零していた。

「武琉さん、もしかして私に怒ってる?」
「え?」
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