あなたとは合わないと思っていたけれど
 武琉が思ってもいなかったことを言われたかのように目を見開いた。

「最近ずっと私に対して機嫌が悪そうだから」

 アルコールの影響だろうか。なかなか言い出せなかった言葉も素直に言える。

「そんなことはない……ごめん、俺の態度が悪かったな」

 武琉が少し困ったような微笑を浮かべた。

 香澄は首を横に振った。

「ううん、私が勘違いしていたのかもしれない、神経質だったのかも」

(少し素っ気なくされたくらいで、気にし過ぎたのかな)

 被害意識が強すぎるのかもしれない。
 武琉は何か考えるように口を閉ざした。

(今、何を考えてるのかな?)

 香澄は武琉の気持ちが分からない。彼が好きだけれど、理解できるほどの絆がない。その事実に胸が痛む。

 そのとき、ビーズクッションの脇に放置してあった香澄の携帯電話から、着信音が鳴った。

 画面には、北山英二と表示されている。

 香澄は手を伸ばして、電話に出た。

「はい」
《遅くにごめん、今話せる?》

 電話の向こうから英二の声と、騒めきが聞こえてきた。

 香澄は武琉をちらりと見遣った。彼は香澄を見つめていた。顔には感情が現れておらず、何を考えているのか読み取れない。

「うん、少しなら」

 あまり長話をしたら武琉に失礼だと感じて、そう答えた。

《今、飲んでたたんだけど、香澄の連絡先を知りたいって言われたんだ。教えていいか確認したくて》
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