あなたとは合わないと思っていたけれど
 それでも香澄は武琉が帰宅してくれたことに、ほっとしていた。

 彼は有名ブランドの大きな手提げ袋を、香澄に差し出した。

「お土産」
「いつもありがとう」

 香澄は驚きながらそれを受け取る。これまでも彼はフライトの度にお土産を買ってきてくれた。けれど可愛らしい焼き菓子やお茶など、友人にプレゼンとするようなものが多く、香澄が遠慮せずに受け取れるものばかりだった。

 ところが今回は違った。手提げの中に入っていたのは香澄が以前から気になっていたバッグだった。ただ非常に高価なため、購入する決断が出来ずにいたものだ。友人関係で贈るとは思えないようなもの。

「ありがとう……」

 もっと感謝を伝えたいのに言葉に詰まってしまう。

「気に入らなかった? 香澄が狙っていたものだと思ったんだけど」
「ううん、ずっと欲しかったものですごくうれしい……でもこんな高価なお土産を貰うのは申し訳なくて」

 これはまるで本当の妻に送るような品物だ。

 戸惑う香澄に武琉は「気にしないで」と優しく微笑む。

「結婚してから、ちゃんとしたプレゼントひとつしていないことに気づいたんだ」

 確かにその通りだ。けれど契約結婚だったら当然のことではないだろうか。

「申し訳がるよりも喜んでくれる方がうれしい」
「うん。ありがとう!」

 香澄は心からの笑顔で応えた。単純だが最近落ち込みがちだった心が、瞬く間に晴れていく。
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