あなたとは合わないと思っていたけれど
「そういうの考えちゃうのは職業病だね」
「そうだな」

 武琉はくすりと笑った。

「いつか、武琉さんが操縦する飛行機に乗ってみたいな」
「香澄が乗っていると思うと、ますますやる気が上がりそうだ」
「武琉さんはいつだってやる気全開じゃない」

 羽田空港から小樽空港まではあっと言う間だ。おしゃべりをしている間に到着していた。

 飛行機から降りると香澄は周囲を見回した。

 これからの二日は武琉とふたりで北海道を楽しめる。雄大な自然や美味しグルメなどやりたいことがいっぱいだ。

 小樽の街をふたりで歩いた。歴史ある街並みは眺めているだけでも楽しい。

 アイスクリームを買って食べたり、小樽運河クルーズを体験したりと、あっという間に時間は過ぎていく。香澄が絶対に立ち寄りたかったひまわり畑は、本当に明るく美しかった。

 北海道グルメも心ゆくまで堪能した。

 二日目、香澄はディナーまでの空時間に、部屋でお土産の整理をしていた。

 武琉がその様子を覗き込む。

「ずいぶん買い込んだんだな」
「うん、私は滅多に旅行に行かないから、いつもお土産を貰いっぱなしになって気になってたの。この機会にお返しをしたいと思って」

 同僚や家族へのお土産を選んでいたら、かなりの数になってしまった。なるべくコンパクトにまとめてキャリーケースに仕舞う。

「香澄は律儀だな」
「そんなことないけど。それに自分の分もちゃんと買ってあるんだ」

 香澄は先ほど一目ぼれをして購入した、ご当地もののマグカップを武琉に見せた。スタイリッシュなイメージの武琉にはあまりに合わなそうな、緩い雰囲気のカップだ。けれど彼は興味を持った様子だった。

「面白いデザインだな。俺も買おうかな」
「本当に? それならホテルの売店で売ってたから後で買いに行こう?」

 香澄は張りきって言った。武琉とお揃いのマグカップだなんてうれしい。

(本当の夫婦って感じがする)

 もちろん彼にそんな意図はないだろうけれど。

 
 ディナーはホテル内のフレンチレストランを選んだ。

 ドレスコード有りとのことなので香澄の武琉もドレスアップしてレストランを訪ねた。店内はラグジュアリーな雰囲気だ。

 テーブルに着くと武琉は慣れた様子でワインを選んだ。食事の方は事前に注文を済ませてある。

 非日常を感じさせるムードの中、香澄は武琉の端整な横顔を見つめていた。高い鼻梁、引き締まった顎のライン。つい見惚れてしまいそうになる。

 彼は視線に気づいたのか、香澄と目を合わせて微笑んだ。その瞬間、香澄の鼓動が高鳴った。

(なんだかデートしているみたい)

 この場の雰囲気のせいだろうか。そんな錯覚をしそうになる。
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