あなたとは合わないと思っていたけれど
「契約結婚を申し込んだときに、俺はお互い干渉し合わないようしようと言った俺はなるべく顔を合わさず距離を置くつもりでいた」
「……うん」

 嫌な予感に苛まれ香澄は掠れた声で相槌を打った。

(武琉さんは何を言おうとしているの?)

 香澄にもっとしっかり線を引けと警告しようとしているのだろうか。

「でも香澄と過ごしているうちに、もっと一緒に過ごす時間がほしいと思うようになった」
「……え?」

 話が思っていなかった方向に進んでいる。

「香澄、あのときの約束を破ることになるが、君を好きになってしまった」

 香澄の鼓動が激しい音を立てた。

(武琉さんが……私に好き?)

「香澄の笑顔が見たくて、いつの間にか早く家に帰るようになっていた。もっと一緒にいる時間が欲しいと思うようになっていた。北山さんと香澄が一緒似るところを見ると、嫉妬で自分を抑えられなくなった」

 武琉は香澄から目を逸らさずに言葉を続ける。

「武琉さんが嫉妬?」

 それは想像してもいないことだった。

 高嶺の花であるエリートパイロットの武琉が、香澄のことで胸を焦がすことがあるなんて。

 けれどそのとき頭の中で、一つの仮定が生まれた。

「この前怒っていたのって、私が北山君と電話をしていたから?」

 彼はあのときも嫉妬していたのだろうか。
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