あなたとは合わないと思っていたけれど
「ああ。俺の存在なんて忘れて楽しそうにしている香澄を見ていたら、たまらない気持になった。それであんなことを。無理なことをして悪かった」

 武琉の顔に気まずさが浮かんだ。対照的に香澄の頬には熱が集まった。

(あのキスは嫉妬したからだったんだ。謝ったのは強引にしたから?)

 どちらにしても、愛情があったのは確かだ。

「大丈夫。嫌じゃなかったから」

 香澄の言葉に、武琉が僅かに目を瞠った。

「本当か?」

 香澄は胸の高鳴りを感じながら頷いた。

「私も武琉さんが好きだから……驚いたけどうれしかった」
「香澄……」

 武琉の腕が香澄の体を遠慮がちにそっと抱き寄せた。

「同じ気持ちでいてくれたんだな」

 触れ合う肌から彼の対応が伝わってくる。香澄はどうしようもない緊張とときめきを感じていた。

「でも契約結婚の約束を破ることになるから、言えなかったの」
「これからは、気持ちのままに言える。香澄を愛してる」

 香澄を抱く腕の力が強くなる。

 見つめ合い、唇を重ね合った。

「んっ……」
「香澄……」

 あの夜のキスよりも遥かに濃厚な触れ合いが続いていく。

 一層強く抱きしめられて、ふたりの間には僅かの隙間もない。

 武琉の舌が香澄の唇を押し割り、口内に侵入する。

 その瞬間びくりと震えた体を抑えられ、熱い舌を絡められた。

 ぞくぞくする感覚に、香澄は何も考えられなくなった。
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