あなたとは合わないと思っていたけれど

 
 ホテルをチェックアウトしたら、飛行機で東京に帰らなくてはいけないと思うと寂しくなる。

(もっと一緒に居たかったな)

 こんなふうに家に帰るのが残念に感じるなんて、これまでの香澄では信じられないことだ。

「香澄、そろそろ時間だ」

 チェックアウトの時間になったのでホテルを出る。

「どうした?」

 名残惜しくて部屋を振り返る香澄に武琉が気づいて声をかける。

「もう少しここにいたかったと思って」
「そうだな。また来よう」

 武琉が柔らかな表情になった。

「……うん、楽しみにしてる」
「行こう」


 武琉がとても優しい目をして香澄の手を取った。
 

 羽田に到着したのは午後二時過ぎだった。武琉も香澄も明日は仕事なので、真っすぐに家に帰って体を休める予定だ。

 ターミナルから京浜急行の駅に向かおうとしていると、忙しない足音が近づいてくる。それから数秒後に大きな声をかけられた。

「武琉君!」

 香澄の心臓がどくんと跳ね、ひやりとした感覚が急速に広がっていった。

 気づかないふりをしてしまいたい。そう思ったけれど武琉が立ち止まり振り向いてしまった。

「早織?」

 香澄も仕方なく彼の隣で立ち止まる。今日の早織は制服ではなく私服姿だった。

 可愛らしいデザインのベージュのワンピース姿で、バッグと靴は白。全体的にとても女の子らしい雰囲気だ。

「武琉君、今帰ったの? 旅行楽しかった?」

 香澄の表情が暗く沈んだ。

(彼女は私たちが旅行したことを知ってるんだ)

 彼女はどうやって調べているのか、武琉のプライベートをよく把握している。

「早織は仕事帰りか」

 武琉が淡々と返した。

「うん。武琉君と偶然一緒になるなんて驚いた。方向同じだし一緒に帰ろう?」
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