あなたとは合わないと思っていたけれど
 早織は言葉の通り驚いた表情をしている。けれど香澄はどうしても疑いを持ってしまう。

(本当に偶然なのかな?)

 旅行の予定を知っているのなら、飛行機の到着時間も把握しているかもしれない。その場合、偶然を装い待っていることは可能だ。

 そこまでするとは考えづらいけれど、以前見聞きした早織の武琉に対する強い思いと、強引さを考えるとあり得ない話ではない気がする。

 彼女は今無邪気に見える笑顔だけれど、さっきから香澄の方はちらりとも見ない。いないものとして扱っている。それはあまりにあからさまな態度だった。

(私の存在が邪魔で仕方ないんだろうな)

 武琉は幼馴染の彼女に対して親切で好意的だから、一緒に帰ろうという誘いを断るわけがない。

(せっかくの旅行だったのに)

 幸せな気持ちのまま終わりたかった。失望が胸の中に広がっていく。

 それに何かしかけられそうな不安もある。


 だからと言って、同じ方向に帰る程度のことで嫌だとは言えない。

「いいよね? それから今度買い物に連れていってほしいんだけど」

 決定事項のように念押しする早織に、武琉が眉をひそめた。それは香澄にとって意外だと感じる反応だった。

「早織、もう大人なんだから礼儀を守れ。俺にあれこれ要求する前に、まずは香澄に挨拶をするのが先だろ?」
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