あなたとは合わないと思っていたけれど
 口出しが憚られる雰囲気に圧倒されて、香澄は反論できずにいた。周囲の視線が香澄に集まる。好意的ではないその眼差しは、早織の言葉を聞いて香澄を悪女だと思っているからかもしれない。

 見世物になったような恥ずかしさと、早織の常識はずれな言動に憤りながらも、言葉が出ないでいたそのとき、武琉が一歩前に出た。
 早織と不躾な視線から香澄を守ように、自分の体で遮る。

 彼の表情はいつになく強張っていて、早織も武琉の反応が予想外なのか想像しかった口を閉ざす。

「早織、香澄は君を悪く言ったりしていないだろ。言いがかりは止めるんだ」

 武琉の声は早織の顔が青白くなるほど厳しかった。

「た、武琉君……言いがかりじゃないよ。本当に香澄さんは私にきつくて、今だって私をのけ者にしようとしたじゃない!」

「香澄は人に対してそんな態度は取らない。仮に早織を嫌っていたとしても、君が言うような意地悪なんて子供っぽい真似はしないはずだ」

 武琉の言葉はすべて香澄を庇うものだった。

(武琉さん……)

 香澄は彼からの信頼を感じて胸が迫った。

 彼の発言は早織にとっても予想外だったようで、彼女の顔は蒼白に、悲しみと苛立ちに染まっている。

「……武琉君は香澄さんをよく見すぎだよ。意地悪しないなんて嘘。だって彼女は陰気なひきこもりなんだから!」
「早織!」

 武琉が一際厳しい声を出して、早織を制した。

「武琉君……」
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