あなたとは合わないと思っていたけれど
「どうして? 武琉さんと話して納得したんじゃないの?」
「してるわけないでしょ? 武琉君に嫌われてもあんたを許せない」

 早織は正気を失っているようにすら見えた。

 けれど現状危機的状況なのは、香澄の方だ。

「手間かけさせやがって!」

 ついに追いつかれてしまい、香澄は恐怖に青ざめた。そのとき。

「香澄!」

 武琉が息を切らしてかけつけ、香澄を自分の背中に庇った。

「た、武琉君?」

 早織が動揺した震える声で叫ぶ。

 武琉は彼女と男を睨みつけた。

「早織、一線を越えたな。お前のやったことは許されない」
「違う……私はただ」
「警察に通報する」


 武琉は油断なく男を睨みながらスマホを取り出した。早織の顔がますます青ざめた。

「待って、事情を聞かないで警察を呼ぶの?」
「事情? お前が人を使って香澄を襲おうとしたんだろう?」

「違う! 私はちょっと脅かそうとしただけ、本当に傷つけるつもりなんてなかった……仕方ないでしょ? 武琉君を奪ったこの人が許せなかったの」

 早織が大粒の涙を流しながら、崩れ落ちた。

 武琉は冷たい目でその様子を眺めていた。哀れなその姿に同情しているのだろうか。

 香澄は何も言えず彼らを眺めていた。

(武琉さんはどうするの?)

 しばらくすると、武琉が本当に通報を始めた。

 泣き叫ぶ早織と男は、容赦なく連行されていく。

「香澄……大丈夫か?」
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