あなたとは合わないと思っていたけれど
◇◇◇
十月上旬。香澄は有給休暇を取り、タイ行の飛行機に乗っていた。
武琉が多忙でなかなかまとまった休みが取れず、旅行の約束を果たせないので、香澄が彼のフライト便に乗り現地で落ち合うことにしたのだ。
香澄が一度彼が操縦する飛行機に乗りたいと言ったのがきっかけで生まれた計画だ。
ビジネスクラスの窓側の席に座り、香澄は離陸を待ちわびていた。
やがて飛行機がゆっくり走り出し大空に飛び立った。なんの不安も感じないスムーズな離陸だ。
(武琉さんが操縦したのかな?)
そんなことを想像してしばらくすると、機内アナウンスが流れだした。
「本日はエアスカイジャパン航空をご利用いただきありがとうございます」
香澄は思わず顔を上げて微笑んだ。
(武琉さんの声だ!)
機械越しなので少し違うけれど、間違いなく彼の声だ。
「この飛行機はASJ727便、スワンナプーム国際空港行きです。飛行時間は……」
武琉の流暢な声が、機内に響く。
香澄はまるで自分のことのように誇らしさを感じていた。
無事現地に到着した香澄は、ひとりで予約したホテルに向かった。武琉は後から合流する予定になっている。