あなたとは合わないと思っていたけれど
「それでも香澄のように慣れてない女性が、海外でひとりで出歩くのは危険だ」

 武琉はまるで香澄をガードするように肩を抱いたまま歩き出す。

 すっかり過保護になった武琉に、香澄は「ごめんね」と謝る。

 叱られてしまったけれど、それだけ大切に思ってくれているからだと思うとうれしい。

「海を見たかったのか?」
「そうなの。夕焼けが綺麗だろうなと思って」
「明日サンセットディナーを予約するよ」
「本当? ありがとう。でも他のクルーを放っておいて大丈夫なの?」

 自由時間とはいえ、仕事で来ているのに香澄に構ってばかりでいいのだろうか。

「大丈夫。みんなにも話してあるから邪魔されないよ」

 武琉がそっと香澄を抱き寄せた。

 武琉と本当の夫婦になってから、彼は職場でも溺愛を隠さなくなったようだ。

 菜恵に対しても惚気を言うのだとか。

 香澄はそんな話を聞くと恥ずかしくなるが、幸せだと感じる。

「武琉さん、海を散歩したら、街を歩いてみたいな。お店とかもみてみたい」
「わかった。いろいろ調べておいたから案内するよ」
「ありがとう」
「その後はホテルに帰って夕食にしよう」

 武琉が香澄の肩を抱いたまま歩き出した。

「その後は部屋でゆっくりだね」
「ああ、でも香澄はゆっくりできないかも?」
「え?」

 武琉の甘やかな眼差しで、彼の言葉の意味に気が付いた。

「もう、揶揄わないでよ」
「揶揄ってない、本気だけど?」

 武琉が不敵な笑顔になる。香澄は胸にこみ上げる幸せを感じながら、彼に体を預けた。
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