あなたとは合わないと思っていたけれど

「分かりました。その前にいくつか質問してもいいですか?」
「もちろん」
「どうして私を選んだんですか? 形式的な結婚とはいえ、ほとんど交流がなかった私に話をもちかけるのは不思議な気がして……」
「そう思われるのは当然だ。正直に答えると他に頼めそうな相手がいないからなんだ」
「そうなんですか?」

 武琉は社交的な性格から、人付き合いは多そうなイメージがあるけれど。しかし彼は苦笑いになった。

「考えてみて。結婚後干渉せずお互い自由に過ごそうなんて、普通は納得できないものだよ」
「……言われてみればそうかもしれないです」

 武琉は結婚相手に困らなそうだが、彼が求めるような契約結婚に同意する女性は、逆に少ないかもしれない。むしろ彼と本当の夫婦として過ごしたいと思う女性が多いのではないだろうか。

 目の前の彼はそこにいるだけで人目を引く存在感を放っている。整った容姿だけでなく、内から滲み出るような力強さがあるのだ。特別な人、そう思わせるようなオーラがある。

「この前、西條さんの話が聞こえてきたとき、正直言って驚いたよ。放っておいてくれる人と結婚したいなんて言っていたから。普通は逆だろ?」

 香澄の愚痴を思い出したのか、武琉がくすりと笑いながら続ける。

「西條さんは自宅でひとりで過ごす時間が好きで、自分の生活を邪魔されたくないと言ってたね。俺も同じ気持ちなんだ。だから上手く協力できると思った」
「……天谷さんもひとりで過ごすのが好きなんですか?」

 彼からは香澄のように家に引きこもっているような気配を感じないから、かなり意外だ。

「俺は家にいるより外に出たい方なんだ。せっかくの休みの日に家でじっとしているのはもったいないと感じるタイプだ。いろいろなことに興味があるしね。仕事でもプライベートでもあちこち飛び回っているよ。西條さんと同じなのは、自分の生活を邪魔されたくないってところ」

「なるほど。望みは同じでも方向性が違うんですね」

 対局のふたり。香澄が陰なら武琉は完全に陽だ。
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