あなたとは合わないと思っていたけれど

 翌日。香澄は武琉に連絡をした。彼は今日、国内フライト担当なので夜なら会えるとのことだった。香澄はプライバシーをしっかりと確保できるレストランの個室を予約した。

「結論は出たかな?」

 武琉は時間ちょうどにやって来た。お品書きをちらりと見ただけで注文を決めると、料理が来るより先に本題に入った。香澄は彼の目を見つめながら返事をする。彼の強い眼差しの前だと尻込みしそうになるけれど、これは仕事の一環だと自分を誤魔化して返事をする。

「決める前に、もう少し確認したいことがあります」
「ということは前向きに考えてくれてるんだ」

 武琉は機嫌良さそうに口角を上げた。香澄は「はい」と正直に相槌を打つ。
「私の方もあまり余裕がない状況で、今後どうするか早く決めなくちゃいけないんです。あの、まずお伺いしたいのは契約結婚をする場合、期限はどれくらいを考えていますか?」

 彼の言う通り悠長に考えている時間がない。香澄はストレートに尋ねる。

「機長になるまで」

 武琉はほんの僅かの間の後、答えた。

「理由は、それまでの間、仕事に集中したいからだ」

 武琉は香澄の目を見て話しを続ける。香澄は納得して頷いた。
 副操縦士から昇格する条件には、規定のフライト時間をクリアする必要がある。多くの知識を身に付けるために勉強も必要だろう。

「家族サービスなんてやってる余裕はないから、本当の家庭を築けないってことですね」
「あけすけに言えばそう」

 武琉が苦笑で肯定した。

「結婚したって側にいてやれないなら、申し訳ないだろ?」
「そうですね」
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