あなたとは合わないと思っていたけれど
 武琉はさらりと言った。彼から大人の男の余裕と包容力を感じて、その言葉が無理をしているのではないと分かる。香澄はそれ以上細かいことが言えなくなった。

「他に気になることはある?」

 香澄は少し考えてから口を開く。

「天谷さんが機長になる前に、どちらかが離婚したくなった場合はどうしますか?」

 武琉は少し意外そうな顔をした。

「それは俺たちの関係が悪化する可能性を考えてる?」
「いえ、そうじゃなく……」

 あまり顔を合わせなければ喧嘩をする機会もないだろう。

「例えば天谷さんに好きな人が出来た場合とか」

 香澄がそう言うと、武琉がふっと笑った。

「その心配はない。仮にそんな相手と出会ったとしても、君を蔑ろにすることはないし、契約期間はしっかり守るよ。心配なら正式な契約書を用意する」

 武琉は自信があるようだった。しかしそれは他に好きな人をつくるつもりがないのではなく、仮に出来たとしても自分自身を律し、香澄が嫌な思いをしないように上手く対処するという意味だと感じた。

(たしかに、しっかり対応しそうだけど)

 実家の両親にばれないようにしつつ、好きな相手の心も立場もしっかり守って、不倫などとののしられることがないようする。彼ならそれくらい可能そうだ。

「もし西條さんに好きな相手が出来た場合は……そうだな。そのとき相談することにしよう。悪いようにはしないから」
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