あなたとは合わないと思っていたけれど
 武琉は今度は少し迷ってからそう言った。さすがの彼でも香澄の問題までは把握しきれない。臨機応変に対応しようと考えているようだ。

(どうしよう……条件はいい、今のところ問題は見当たらない)

 あとは香澄の気持ちひとつだ。

 頭の中で現状を思い出す。何年も続く両親からの結婚督促、不安な隣人――。

 香澄はそっと息を吐いた。

 武琉はきっと約束は守ってくれる。

 出会って間もないけれど、彼を信じられると思った。

 会社での彼の評判というのもあるが、これまでのやり取りで彼の誠実さを感じたこと。そして香澄自身の勘もそう告げている。

(全てが希望通りにはならない。それなら選ばなくては)

 香澄は覚悟を決めて武琉を見つめた。

「……分かりました。契約結婚をお受けします。よろしくお願いします」

 香澄の決断に、武琉はほっとしたように微笑んだ。

「こちらこそよろしく」

 その言葉と同時に、ふたりの間にあった緊張感が融ける。香澄は空気が和らいだ気がした。

「それじゃあ今後の段取りについて具体的に話し合おう。西條さんからの要望や気になってることはあるかな?」

 武琉がそう言いながら、スマホにスケジュールを表示した。

「あ、はい。私なりに考えてはみたんですけど……」

 香澄はバッグから昨夜作成したリストを取り出した。
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