あなたとは合わないと思っていたけれど
 しかも母のお勧めは真面目で几帳面な人だと言う。緩い私生活を送る香澄とは正反対で相性が良いとは思えない。一日も過ごさないうちに、お互いストレスが溜まりそうだ。

(いや、私の場合は誰が相手でも難しいかも)

 だって仕事以外は家に引きこもって、ひとりで過ごしたがる妻なんて、男性にとってつまらないはず。一緒にいる意味だって感じないだろう。

(私もとくに結婚願望はないし)

 無理に結婚する必要なんてまったくないのだ。

 香澄は今の生活に十分満足している。ひとりで寂しいなんて思ったことはない。

 でもこの気持ちを伝えても母は理解してくれない。

 どんなに説明しても、香澄を変わり者だと責めて嘆くだけなのだ。

 母が一方的に話し続けた通話を終えると、香澄は携帯電話をバッグに仕舞いオフィスビルを出た。

 途端に一月の冷たい風が頬をかすめて、思わず目を瞑った。

「うう、寒い……」

 香澄はぼそりと呟いてから、足早に駅に向かった。

 香澄は基本的には仕事後は即帰宅するが、今日は親友の野(の)崎(ざき)菜(な)恵(え)と食事をする約束があるため、待ち合わせの店がある品川駅に向かった。
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