あなたとは合わないと思っていたけれど

『彼女は私の親友で同期の西條香澄です』

 香澄は空港勤務ではなく、本社の調達部に所属していると自ら説明してくれた。

 その声を聞いて気づいた。結婚したくないのは彼女の方だと。

 職種は違うが同じ会社の仲間だと思うと、初対面でも距離感が近くなる。多くの社員がそうであるように新人の頃に現場を経験しているはずなので、パイロットという仕事への理解も深いはずだ。

 武琉はさりげなく香澄を観察するために目を向けた。

 綺麗なアーモンド型の瞳が、武琉を見定めるように見上げていた。ダークブラウンの柔らかそうな髪はふわりと纏められている。

 小さな顔に華奢な体型の彼女は一見落ち着いた上品な雰囲気で、まさか『私は恋愛もしたいと思わないな。そんなパワーがないと言うか、家でのんびりしている方が幸せだよ』とか『家でまったりだらだらできたら満足』なんて気が抜けた発言をするようには到底見えなかった。

 引きこもりたい性質といい、外見とのイメージが全然違う。

(さっきのが本音だとしたら、今の姿は猫を被っているのか?)

 武琉は彼女がおもしろいと思った。武琉の交流範囲は広いが、初めて会うタイプだ。よい意味で彼女に興味が湧いた。

(無理やり進められる見合い相手より全然いい)

 彼女だったら協力し合えるのではないだろうか。

 しかしその場は挨拶を交わすだけで引き下がった。相手の素性がはっきりしている以上、焦る必要はない。いくらでも連絡の取りようがある。

 頭の中で、今後の予定を組み立てはじめた。
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